07 ・ ブランドと言葉
ネーミング・コピー
決まった相手と掲載先に向けて、名前や見出し、キャッチコピーの言葉を選び、使い方とともに確定するガイドです。名前だけ、コピーだけを作る場合も、同じ工程で進めます。
- 決めること
- 名前やコピーの文言、意図、使う場面、変えない表現
- 主な成果
- 採用した言葉と、その意図、使う場面、補足情報、変えない表現の記録
- 前後のガイド
- 言葉遣いの基準はブランド方針から受け取り、採用したコピーはキービジュアル・広告・SNS画像のガイドで画像に組みます。操作を助ける画面の言葉はUXライティングのガイドで扱います。
ネーミング・コピーの工程と判断
概要
名前やコピーは短いため、一語の選び方で意味が変わります。このガイドでは、案を多く出すことより、同じ基準で比べ、実際の掲載先で見て選ぶことを重視します。名前とキャッチコピーは役割が違うため、両方を作る場合は依頼の段階から分けて扱います。どちらか一方だけを作る場合は、その言葉の依頼書だけで進めます。
AIは、切り口を変えた案の作成と、基準に沿った比較の下書きを担えます。どの案を採用するかは人が決めます。名前を商品名やサービス名として使う場合は、商標やドメインなどの確認が別に必要です。確認の範囲と担当は案件で決め、必要に応じて専門家に相談します。AIが案を出したことは、その名前を使えることを意味しません。
向いている場面
- 新しいサービスや商品の名前を決めるとき
- 告知やWebの見出しなど、最初に読まれる一文を決めるとき
- 候補が複数あり、好みの議論では決められないとき
このガイドで扱わないこと
- すべての制作物に共通する言葉遣いの基準。ブランド方針のガイドで扱います。
- 画面の操作ラベルや案内文など、操作を助ける言葉。UXライティングのガイドで扱います。
- 名前の商標などの使用可否の判断。工程05で、案件で決めた担当や専門家に確認を依頼します。
着手時にそろえる材料
- ブランド方針
- 言葉遣いのルールと避けたい誤解。ブランド方針のガイドで採用したものを使います。
- 掲載先と読む人
- どこで、どの大きさで、何と並んで読まれるか。
- 伝えたい事実
- 内容、条件、開始日など、言葉が誤解なく伝えるべきこと。
- 文字数と表示の制約
- 掲載先ごとの上限や改行の条件。
- 既存の名前と本人の案
- 変えられない表現を含みます。本人の案もAIの案と同じ基準で比べます。
隣接するガイドとの違い
ブランド方針のガイドは全制作物に共通する言葉遣いの基準を決め、このガイドはその基準を使って特定の場所に置く言葉を決めます。採用したコピーを画像に組む作業はキービジュアル・広告・SNS画像のガイドの工程01から、印刷物に載せる作業は印刷物・グッズのガイドの工程01から始めます。
| ガイド | 決めること | 主な成果 | 開く段階 |
|---|---|---|---|
| 06 ブランド方針 | 対象者、提供する価値と根拠、言葉遣い、デザインのルール | ブランド方針と、方針を試した制作例 | 表現の基準がまだないとき、最初に |
| 07 ネーミング・コピー | 名前やコピーの文言、意図、使う場面、変えない表現 | 採用した文言と、その意図の記録 | 方針があり、掲載先と読む人が決まったとき |
| 08 キービジュアル・広告・SNS画像 | 構図、文字の優先順位、サイズごとの変更点 | 媒体とサイズごとの完成画像 | 使うコピーと正式な素材がそろったとき |
全体の流れと分担
工程は01から05へ進みます。工程03で人が候補を選び、工程05で採用する言葉を決めます。工程01で比べる基準をそろえておけば、工程02では複数の担当がそれぞれ案を出せます。工程04で掲載先に置くと読めない、意図が伝わらないと分かったら工程03へ戻って候補を選び直します。工程03でどの案も基準を満たさなければ工程02へ、基準そのものが目的に合わなければ工程01へ戻ります。名前として使う言葉は、工程05から権利の確認を別に進め、結果が出るまで確定したものとして次のガイドへ渡しません。
工程ごとの分担
| 担い手 | 01依頼と基準 | 02切り口と案 | 03候補を絞る | 04掲載先で比べる | 05言葉を決める |
|---|---|---|---|---|---|
| 人 | 判断:読む人と伝えることを決め、比べる基準を確定する | 切り口を選び、自分の案を同じ形式で加える | 判断:掲載先で比べる候補を選ぶ | 判断:表示の大きさで読めるか、意図が伝わるかを判断する | 判断:採用する言葉と、権利の確認の範囲と担当を決める |
| AI | 基準の案と文字数の制約を整理する | 切り口ごとの案に、意図と誤解の可能性を添える | 基準ごとの評価表と推奨を示す | 掲載先の見本に候補を当てはめる。環境があれば作る | 採用した言葉の使い方の記録を作る |
| 別の担当 | なし | 同じ依頼書と基準で、別に案を出す(並行) | なし | なし | なし |
| 初見の読み手 | なし | なし | 協力を得られる場合、説明なしで読み、何を想像したかを答える | なし | なし |
| 確認の担当 | なし | なし | なし | なし | 名前として使う場合、商標、ドメイン、アカウント名などを確かめる |
迷ったときの参照先
手元の状況に近いものから、該当する節を開いてください。
015工程のうち1
誰に何を伝えるか決める
言葉を読む人、読む場所、読んだ後にしてほしいこと、伝える事実を決め、案を比べる基準にします。
考え方
名前とコピーでは、同じ言葉でも役割が違います。名前は繰り返し呼ばれ、覚えられ、別の文脈でも使われます。キャッチコピーは、ある掲載先で最初に読まれ、続きを読むきっかけを作ります。最初に、今回作る言葉が名前か、コピーか、その両方かを決め、それぞれの役割を書きます。
比べる基準は、案を見る前に決めます。案を見てから基準を作ると、気に入った案に合わせた基準になります。基準には、方針の言葉遣いに合うか、伝える事実を誤解なく伝えられるか、掲載先の文字数に収まるか、声に出したときに言いやすいかを入れます。
推奨と理由
名前とコピーを両方作るときは、依頼書を分ける
理由名前に説明の役割まで持たせると長く覚えにくくなり、コピーに覚えやすさだけを求めると内容が伝わりません。役割を分けると、それぞれの基準で比べられます。
変えない表現を先に書き出す
理由既存の店名や正式な条件の表記など、変えられない言葉が後から分かると、選んだ案が使えなくなります。
次へ進む目安
- 今回作る言葉ごとに、役割、読む人、掲載先、文字数が書かれている
- 比べる基準が、案を出す前に決まっている
具体例
焙煎所の定期便の名前とコピー
説明のための架空の例です。ブランド方針のガイドの具体例に出てくる焙煎所が、始める定期便の名前とキャッチコピーを決める場面です。ブランド方針のガイドで採用した方針を使います。以降の工程でも同じ例を使います。
- 名前の役割
- 定期便を店頭やSNSで呼ぶための名前。店名と並べて使う。8文字程度まで。
- コピーの役割
- 開始を知らせる告知画像とWebの見出しで最初に読まれる一文。読んだ人に何が届くのかを伝え、申し込みの説明へ進んでもらう。
- 伝える事実
- 毎月、その月に焙煎した豆と、焙煎の意図を書いた手紙が届く。
- 比べる基準
- 方針の言葉遣いに合うか。「高い店」に見えないか。何が届くかを補足なしで想像できるか。声に出して言いやすいか。
- 変えない表現
- 店名。
025工程のうち2
切り口を決めて案を出す
方向の異なる発想の切り口を決め、切り口ごとに案を出します。
考え方
案の数を増やしても、同じ発想から出た案ばかりでは比べる意味がありません。届くものから考える、受け取る場面から考える、ブランドの特徴から考えるなど、方向の異なる切り口を先に決め、切り口ごとに案を出します。切り口の数は、比べたい方向の違いに合わせて決めます。案に意図を添えておくと、工程03で語感だけで選ぶことを防げます。
複数の担当やAIに分けて案を出す場合は、全員に同じ依頼書と基準を渡します。基準がそろっていないと、案の違いが発想の違いなのか、依頼の違いなのかを区別できません。本人の案も同じ表に並べ、同じ基準で比べます。
推奨と理由
方向の異なる切り口を立て、切り口ごとに案を出す
理由一つの切り口で多くの案を出すと、似た案の細かな違いを比べる作業になり、どの方向で進めるかを選べません。
案には意図と、誤解されうる読み方を添える
理由短い言葉は複数の意味に読めます。作った側が想定していない読み方を先に挙げておくと、比べるときの見落としを減らせます。
次へ進む目安
- 方向の異なる切り口から案が出ていて、切り口どうしの違いを比べられる
- 各案に、意図と誤解の可能性が添えられている
- 本人の案や既存の候補がある場合は、同じ形式で並んでいる
具体例
焙煎所の定期便の名前とコピー
- 切り口 届くもの
- 名前「焙煎だより」「豆と手紙」。
- 切り口 受け取る場面
- 名前「月はじめの豆」「つきいち焙煎」。
- 切り口 焙煎の理由が分かる
- 名前「焙煎ノート」。コピー「今月の豆と、焼いた理由が届きます。」
- 本人の案
- 名前「店主の定期便」。
- 誤解の可能性
- AIは、「焙煎ノート」は文房具やアプリの名前に、「店主の定期便」は店主個人の私的な便りに読めると添えた。
035工程のうち3
候補を比べて絞る
工程01の基準で案を比べ、意図と語感に合う候補を数案に絞ります。
考え方
比べるときは、案を一つずつ評価するより、並べて読むほうが違いが分かります。名前は声に出して読み、店名と続けて言ったときの響きも確かめます。コピーは続く説明文と並べて読み、言い過ぎや重複がないかを見ます。
AIの推奨は判断の材料として使います。評価表でAIが誤解されにくいとした判断に根拠があるかを確かめ、可能であれば、案の意図を知らない人に読んでもらいます。その人の受け取り方は、工程01で決めた「補足なしで想像できるか」を確かめる直接の材料になります。
判断の材料と合否
- 判断すること
- どの案を掲載先での比較へ進めるか
- 材料
- 基準ごとの評価表、案の意図と誤解の可能性、声に出したときの響き、説明なしで読んだ人の受け取り方(得られた場合)
- 合格の条件
- 候補が工程01の基準をすべて満たし、説明なしで読まれても意図と大きく違う受け取り方をされない
- 満たさないとき
- どの案も基準を満たさなければ工程02へ戻り、切り口を変えます。基準そのものが目的に合っていないと分かったら工程01へ戻ります。
推奨と理由
名前は店名と続けて声に出して読む
理由単独では響きのよい名前も、店名と続けると似た音が重なったり長すぎたりします。実際に呼ばれる形で確かめます。
落とした案と理由も記録する
理由掲載先で比べた結果や権利の確認で候補が使えなくなったとき、落とした案から理由を見て選び直せます。
次へ進む目安
- 候補が基準をすべて満たしている
- 説明なしで読んだ人の受け取り方が、意図と大きくずれていない
- 落とした案の理由が記録されている
具体例
焙煎所の定期便の名前とコピー
- AIの推奨
- 名前は「焙煎だより」。届くもの(豆と手紙)が想像でき、方針の「店頭の説明に当たるものを届ける」に合う。コピーは「今月の豆と、焼いた理由が届きます。」
- 初見の確認
- 案を知らない二人に名前だけを見せると、二人とも「店から定期的に届く便り」と答えた。「焙煎ノート」は一人が「記録用のアプリ」と答えた。
- 人の判断
- 名前は「焙煎だより」と「つきいち焙煎」を候補に残した。コピーは「焼いた理由」が強い言い方に聞こえるという意見を受け、「今月の豆と、焙煎した人の話が届きます。」を加えて二案にした。
- 落とした案
- 「焙煎ノート」はアプリに読めるため。「店主の定期便」は私的な便りに読めるため。
045工程のうち4
掲載先に置いて比べる
候補を実際の掲載先の大きさと組み合わせで見て、採用する言葉を決める材料をそろえます。
考え方
同じ言葉でも、SNSの小さな画像と店頭の立て札では読まれ方が変わります。掲載先の見本に候補を置き、実際の表示の大きさで読みます。周りに置く写真やロゴ、価格などと並べると、言葉が担う役割が多すぎないか、写真と同じことを言っていないかが分かります。
この工程の見本は比べるためのものです。告知画像として仕上げる作業は、採用後にキービジュアル・広告・SNS画像のガイドで行います。掲載先が複数ある場合は、最も小さく表示される場所から確かめると、読めない候補を早く外せます。
推奨と理由
最も小さく表示される掲載先で先に確かめる
理由大きな見本では読める言葉も、スマートフォンの一覧表示などで縮むと読めなくなります。
周りの情報と一緒に置いて読む
理由コピーが写真や説明文と同じことを言っていると、限られた面積を使っても伝わる情報が増えません。
次へ進む目安
- 採用候補が、最も小さい表示で読める
- 他の要素と並べても役割が重ならない
具体例
焙煎所の定期便の名前とコピー
- 掲載先
- SNSの正方形の告知画像、Webのトップの見出し、店頭の小さな立て札。
- 名前の比較
- 「つきいち焙煎」は立て札では読みやすいが、SNSの一覧で縮むと「つきいち」が先に目に入り、何の店か伝わりにくかった。「焙煎だより」は縮んでも先頭の「焙煎」で内容が伝わった。
- コピーの比較
- 「焙煎した人の話」は手紙の写真と並べたときに意味がつながった。「焼いた理由」は写真のない立て札で強く見えた。
- 人の判断
- 名前「焙煎だより」、コピー「今月の豆と、焙煎した人の話が届きます。」で次へ進む。
055工程のうち5
使う言葉を決めて記録する
採用する言葉を決め、意図、使う場面、補足情報、変えない表現を記録し、名前として使う場合は権利の確認を手配します。
考え方
採用した言葉は、意図と使い方とともに記録します。記録がないと、別の担当が言葉を短くしたり補足を付け足したりして、意図が変わります。記録には、正式な表記と使わない表記、使う場面、一緒に置く補足情報、変えない表現を書きます。
名前を商品名やサービス名として使う場合は、使えるかを別に確かめます。確認する範囲(商標の区分、使う地域、ドメインやSNSのアカウント名など)と担当を案件で決め、結果が出るまで名前を確定したものとして公開しません。AIによる簡単な検索は、この確認の代わりにはなりません。コピーだけを作る場合は、この確認の手配は不要です。
推奨と理由
表記の揺れを先に決める
理由「焙煎だより」と「焙煎便り」のように表記が揺れると、検索や呼び名が分かれます。正式な表記と使わない表記を一緒に書きます。
権利の確認が終わるまで、名前を載せる制作物を差し替えられる状態にしておく
理由告知画像や印刷物を作った後に名前が使えないと分かると、作り直しの範囲が広がります。画像や印刷物の担当には確認中であることを伝え、名前を差し替えられるデータで作ってもらいます。
次へ進む目安
- 採用した言葉ごとに、正式な表記、使わない表記、使う場面、補足情報、変えない表現が記録されている
- 名前として使う場合、権利の確認の範囲と担当が決まり、結果が記録されている
- 名前の確認の結果が出るまで、その扱いが確認中と明記されている
具体例
焙煎所の定期便の名前とコピー
- 名前の記録
- 正式な表記は「焙煎だより」。使わない表記は「焙煎便り」「ばいせんだより」。店名と並べるときは「(店名)の焙煎だより」。補足情報として「毎月、焙煎した豆と手紙が届く定期便」を一緒に置く。
- コピーの記録
- 「今月の豆と、焙煎した人の話が届きます。」句点まで含めて変えない。
- 権利の確認
- 店主が専門家に依頼し、使う予定の区分で商標を確かめる。ドメインとSNSのアカウント名は店主が確かめる。結果が出るまで、名前は確認中として扱う。
- 次へ
- 記録と確認中の状態を持って、キービジュアル・広告・SNS画像のガイドの工程01へ進む。告知画像では名前を差し替えられるデータで作る。
成果を渡す先
採用した言葉は、その言葉を載せる制作物のガイドへ渡します。名前の場合は、権利の確認の状況も一緒に伝え、確認中のまま確定した制作物を作らないようにします。
| 渡す先 | 渡すもの | 渡す時点 |
|---|---|---|
| キービジュアル・広告・SNS画像 工程01 | 採用した言葉の記録と、名前の権利の確認状況 | 工程05で記録を作ったあと。確認中の名前は差し替えられるデータで作ってもらう |
| 印刷物・グッズ 工程01 | 正式な表記と、名前の権利の確認状況。確認が終わるまで発注を確定しない | 名前やコピーを印刷物やグッズに載せるとき |
| UXライティング | 採用した名前と言葉遣いのルール | 画面の操作ラベルや案内文など、操作を助ける言葉を決めるとき |
このガイドへ戻るとき
キービジュアル・広告・SNS画像のガイドや印刷物・グッズのガイドで、名前が権利の確認で使えないと分かったときは、このガイドの工程03へ戻り、落とした案と理由から選び直します。比べる基準に使える言葉遣いのルールがブランド方針にないと分かったときは、ブランド方針のガイドの工程04へ戻り、工程03で判断に迷った案と、迷った理由を渡します。