10 ・ 媒体と実物
印刷物・グッズ
紙や布などに印刷・製造する物を、使う場面に合わせて設計し、製造先の仕様どおりのデータと、実物で確かめた条件で発注できる状態にするガイドです。品目と用途を決めるところから、校正や試作品を確かめて発注を確定するまでを扱います。
印刷物・グッズの工程と判断
概要
印刷物やグッズは、画面で作ったデザインが、紙や布、インク、加工によって変わって仕上がります。画面で確かめられるのは配置と文字までで、色や質感、手に持ったときの大きさは、試し刷り、校正、試作品で確かめます。データの作成と実物の確認を分け、実物を見て直す時間を日程の中に先に置きます。
AIは、依頼書の整理、デザインと使用例の比較、入稿仕様からの点検表の作成、データの点検を担えます。入稿データを作るには、製造先の仕様に合ったデザインツールと、その書き出しを確かめられる環境が必要です。データの最終的な作成や、色と加工の判断に専門の知識が必要な場合は、デザイナーや製造先に相談します。生成した画像は使用イメージの検討に使い、入稿データや実物の色と質感は別に確かめます。
向いている場面
- ラベル、カード、ステッカーなど、紙や布に印刷して配る物を作るとき
- 色や質感、手に持ったときの大きさが仕上がりを左右する物を作るとき
- 製造先に入稿し、校正や試作品を経て発注するとき
このガイドで扱わないこと
- 画面に表示する告知や広告の画像。キービジュアル・広告・SNS画像のガイドで扱います。
- 印刷物に載せる挿絵そのものの制作。イラスト・画像素材のガイドで扱います。
- 色やロゴの基準そのものの決定。ブランド方針のガイドで扱います。
着手時にそろえる材料
- 使う場面と品目
- 誰が、どこで、どのように手に取り、使うか。
- 数量・予算・納期
- 校正と修正の時間を含めて納期から逆算します。
- 製法と入稿仕様
- 製造先の資料。寸法の取り方、塗り足し、色、加工、文字の渡し方の条件が書かれたもの。
- 正式な素材
- ロゴ、印刷用の色の指定、イラストなど。ブランド方針とイラスト・画像素材のガイドで確定したもの。
- 相談が必要な条件
- 色の再現、特殊な加工、素材の選択など、デザイナーや製造先の知識が必要な点。
隣接するガイドとの違い
キービジュアル・広告・SNS画像のガイドが作るのは画面に表示する画像で、書き出した画像を見て完成を確かめます。このガイドが扱うのは製造する物で、校正や試作品という実物で完成を確かめます。同じデザインを画面と印刷物の両方で使う場合は、色の指定と寸法を印刷用に作り直します。印刷物に載せる挿絵は、イラスト・画像素材のガイドの工程01で、印刷に必要な形式を条件にして作ってもらいます。
全体の流れと分担
工程は01から05へ進みます。工程02で人がデザインを選び、工程04で実物を見て製造へ進めるかを判断し、工程05で発注の権限を持つ人が発注を確定します。品目に共通する色とロゴのルールが決まったあとは、品目ごとの入稿データを別の担当に分けて作れます。工程04で見つかった問題の原因がデータにあれば工程03へ、製法や素材にあれば工程01へ戻り、修正後はもう一度校正や試作品で確かめます。
工程ごとの分担
| 担い手 | 01品目と依頼書 | 02デザインを比べる | 03入稿データ | 04校正・試作品 | 05最終確認 |
|---|---|---|---|---|---|
| 人 | 判断:品目、数量、予算、納期を決める | 判断:実寸の試し刷りを実物に当て、デザインを選ぶ | なし | 判断:実物を確かめ、製造へ進めるか決める | 判断:発注の権限を持つ人が発注を確定する |
| AI | 依頼書と、確かめる項目を整理する | 案と使用状態の見本を作る。環境があれば作る | 仕様書から点検表を作り、データを点検する | 確認の記録と原因の候補を整理する | 校正の指摘、確定データ、発注書を照らす |
| デザイナー | なし | 担当している場合、案を作るか整える | 仕様どおりの入稿データを作る | 担当している場合、色や加工の調整を判断する | なし |
| 製造先 | 製法、入稿仕様、納期の相談に答える | なし | 対応している場合、入稿前のデータ確認に応じる | 色校正や試作品を作る | 最終データを受け取り、製造する |
| 別の担当 | なし | なし | 共通のルールの決定後、品目ごとのデータを作る(並行) | なし | なし |
迷ったときの参照先
手元の状況に近いものから、該当する節を開いてください。
015工程のうち1
品目と用途を決め、依頼書にまとめる
何を、どこで、誰が、どう使うかを決め、品目ごとの寸法、数量、製法、予算、納期を依頼書にまとめます。
考え方
品目の仕様は、使う場面から決めます。豆袋に貼るラベルなら、貼る袋の素材、手で触れる回数、保管する場所によって、紙や加工の選び方が変わります。依頼書には、使う場面、品目、寸法、数量、予算、製法の候補、納期、正式な素材の場所、確かめる必要がある条件を書きます。
納期は、製造の日数に、校正や試作品の確認と、その後の修正の時間を足して逆算します。校正を見てから直す時間がないと、問題に気づいても直せません。製造先によって入稿の仕様や校正の方法が違うため、製造先の候補を早めに決めて仕様を手に入れます。
推奨と理由
校正と修正の時間を、日程に先に入れる
理由実物でしか分からない問題は、製造の直前に見つかります。修正の時間がないと、問題を残したまま製造するか、納期を延ばすかの選択になります。
製造先の入稿仕様を、デザインを始める前に手に入れる
理由寸法の取り方、対応する色、加工の条件は製造先ごとに違います。仕様を知らずに作ったデザインは、入稿の段階で作り直しになります。
次へ進む目安
- 品目ごとに、使う場面、寸法、数量、製法の候補、納期が書かれている
- 校正と修正の時間が日程に含まれている
- 製造先の入稿仕様が手元にある
具体例
定期便のラベルと同封物
説明のための架空の例です。ブランド方針のガイドの具体例に出てくる焙煎所が、定期便「焙煎だより」の豆袋に貼るラベル、同封するショップカード、配布用のステッカーを作る場面です。以降の工程でも同じ例を使います。
- 品目
- 豆袋に貼る丸いラベル(毎月の豆の情報を手書きで足す欄つき)、定期便に同封するショップカード、配布用のステッカー。
- 条件
- ラベルはクラフト紙の袋に貼る。ショップカードは手紙と同じ封筒に入る大きさ。ラベルの数量は半年分。
- 日程
- 定期便の開始日から逆算し、ラベルの色校正と修正に二週間をとった。
- 相談する項目
- 手書き欄に店主のペンで書いてもインクがにじまない紙を、製造先に相談する。
025工程のうち2
デザインと使用例を比べる
デザインの案を、実際に使う状態と実寸の試し刷りで比べ、入稿データを作るデザインを選びます。
考え方
画面の見本は、使う状態をイメージするための材料です。生成した使用イメージでは、紙の質感や袋のしわが実際とは違って描かれます。大きさと読みやすさは、手元のプリンターで実寸に印刷し、実物の袋や封筒に当てて確かめます。
品目ごとの制作に入る前に、共通の色とロゴのルールを決めます。品目ごとに別々の担当が色を選ぶと、並べたときにブランドの色がそろいません。ブランド方針で決めた色の指定を、そのまま印刷の指定として使えるかもここで確かめます。
判断の材料と合否
- 判断すること
- どのデザインで入稿データを作るか
- 材料
- デザイン案、使用状態の見本、実寸で印刷した試し刷り(手元のプリンターでよい)、実際に使う袋や封筒、ブランド方針
- 合格の条件
- 実寸の試し刷りで文字が読め、使用状態で用途を妨げず、方針に合う
- 満たさないとき
- 希望する表現が工程01で選んだ製法では作れないと分かったら、工程01へ戻って製法を見直します。
推奨と理由
実寸の試し刷りを実物に当てて見る
理由画面では拡大した状態で判断しがちです。手に持った大きさで読めない文字は、製造した後には直せません。
品目の制作を分担する前に、共通の色とロゴのルールを決める
理由並べて使う物の色がそろわないと、作り直しが品目の数だけ必要になります。
次へ進む目安
- 実寸の試し刷りで文字が読める
- 使用状態の見本で用途を妨げない
- 品目に共通する色とロゴのルールが決まっている
具体例
定期便のラベルと同封物
- 案
- 余白の多い丸ラベルに名前とロゴを置き、下に手書き欄を設ける案。もう一つは、季節の挿絵を中央に置く案。
- 試し刷り
- 実寸で印刷して袋に当てると、どちらの案も手書き欄が狭く、店主の字が収まらなかった。
- 人の判断
- 店主は挿絵を中央に置く案を選び、手書き欄を広げる調整をしたうえで入稿データへ進めることにした。挿絵は、ラベルの大きさと紙の色、印刷に必要な形式を条件にして、イラスト・画像素材のガイドで作る。
- 共通のルール
- ラベル、カード、ステッカーで、ロゴの色は同じ印刷用の指定を使う。
035工程のうち3
入稿データを作る
製造先の仕様に合わせて、寸法、塗り足し、安全域、色の指定、加工の指定を含む入稿データを作ります。
考え方
入稿データでは、仕上がりの大きさの外側に塗り足しをとり、文字やロゴは裁断の位置から離れた安全域の内側に置きます。裁断は少しずれることがあるため、端まである背景は塗り足しまで伸ばし、切れては困る要素は安全域に収めます。寸法の取り方と塗り足しの幅は、製造先の仕様に従います。
色は、画面の表示に使う指定と印刷の指定で扱いが違い、画面で決めた色を印刷用の指定に変えると色が変わって見えることがあります。ブランドの色を特定の印刷用の色で指定するか、特色や加工を使うかは、費用にも関わるため、製造先やデザイナーと決めます。AIは仕様との照合を手伝えますが、画面のデータから印刷の色の仕上がりを保証することはできません。
推奨と理由
製造先の仕様書を点検表にして、データを一項目ずつ照らす
理由入稿時の不備は、製造先から差し戻されるか、気づかれないまま製造されます。仕様書の項目を順に確かめると、見落としを減らせます。
文字の渡し方を製造先の指定に合わせる
理由指定と違う形で文字を渡すと、製造先の環境で別の書体に置き換わることがあります。
次へ進む目安
- 寸法、塗り足し、安全域が仕様どおり
- 色の指定と加工の指定が、製造先と合意した内容と一致する
- 文字が製造先の指定どおりの形で渡せる状態になっている
具体例
定期便のラベルと同封物
- データ作成
- デザイナーが製造先の仕様に合わせて丸ラベルのデータを作った。背景の色を塗り足しまで伸ばし、名前とロゴは安全域に収めた。中央には、イラスト・画像素材のガイドで描き直された印刷用の挿絵を配置した。
- 色の扱い
- クラフト紙は白い紙より色が沈むため、ロゴの色をどう刷るかを製造先に相談し、まず通常の指定で色校正を出すことにした。
- AIの点検
- 仕様書から点検表を作ってデータと照らすと、ステッカーの角の丸みの指定がデータと仕様で違っていた。デザイナーに伝えて直した。
045工程のうち4
校正や試作品を確認する
製造先の校正や試作品で、色、質感、加工、大きさを実物で確かめ、問題の原因を切り分けます。
考え方
実物は、実際に使う場所に近い明るさで見ます。店内の電球の下と窓際では、同じ紙でも色の見え方が変わります。色の見本と並べ、方針で決めた色の範囲に収まっているかを判断します。貼る、折る、書き込む、こするといった実際の使い方も試します。
問題が見つかったときは、原因がデータにあるのか、製法や素材にあるのかを分けます。文字の位置や色の指定の誤りはデータを直します。紙がインクを吸って色が沈む、加工で細い線がつぶれるといった問題は、データを直しても解決しない場合があるため、製法や素材を見直します。
判断の材料と合否
- 判断すること
- このデータと製法で製造へ進めてよいか
- 材料
- 校正紙または試作品、実際に使う物、確定データ、ブランド方針の色の指定、実際に使う場所に近い明るさ
- 合格の条件
- 色と質感が方針の範囲に収まり、実寸で文字が読め、実際の使い方で用途を妨げない
- 満たさないとき
- 原因がデータにあれば工程03へ戻ります。製法や素材にあれば工程01へ戻り、製造先と製法を見直します。修正後は、もう一度校正や試作品で確かめます。
推奨と理由
実際に使う場所の明るさで見る
理由確認した場所と使う場所の明るさが違うと、使う場面で色が違って見えます。
実物を実際の使い方で扱う
理由書き込む、貼るといった使い方で、見ただけでは分からない問題が出ます。
次へ進む目安
- 色が方針の範囲に収まる
- 実際の使い方で用途を妨げない
- 問題の原因が、データか製法や素材かに分けて記録されている
具体例
定期便のラベルと同封物
- 色校正
- クラフト紙のラベルで、ロゴの色が暗く沈み、方針の明るい印象から離れた。
- 原因の切り分け
- データの色の指定は正しかった。紙がインクを吸うことが原因だった。
- 試作品
- 手書き欄に店主のペンで書くと、紙の表面の加工でインクがはじかれた。
- 人の判断
- 工程01へ戻り、製造先と相談して、白い下地を先に刷る指定に変え、手書き欄だけ表面の加工を外すことにした。工程03でデータを直し、修正後の校正で再び確かめた。
055工程のうち5
製造前の最終確認をする
確定データと発注の内容を、校正の結果と依頼書に照らし合わせ、製造に進めます。
考え方
最後の確認では、校正で直した点が確定データに反映されているか、発注書の品目、数量、納品先、納期が依頼書と一致しているかを確かめます。校正の後にデータを修正した場合は、修正した箇所以外が変わっていないかも確かめます。
製造に入った後の修正は、費用と日程に大きく影響します。発注を確定する人と承認の流れは案件で決め、誰が何を確かめて確定したかを記録に残します。印刷物に名前を載せる場合は、ネーミング・コピーのガイドで手配した権利の確認が済んでいるかもここで確かめます。
推奨と理由
校正で見つけた問題の一覧と、確定データを一項目ずつ照らす
理由修正の指示が複数あると、一部が反映されないまま確定することがあります。
発注書の数量と納品先を、依頼書と並べて読む
理由データが正しくても、数量や納品先の誤りは製造後に取り消しにくい問題です。
次へ進む目安
- 校正の指摘がすべて確定データに反映されている
- 発注書の内容が依頼書と一致する
- 名前の権利の確認が済み、発注を確定する人が確認した記録がある
具体例
定期便のラベルと同封物
- 照合
- 白い下地の指定と、手書き欄の加工を外す指定が確定データに入っていることを、修正後の校正と並べて確かめた。
- 発注書
- ラベルの数量を半年分で確かめ、納品先を店舗にした。ステッカーは配布する催しの前日に届く日程にした。
- 確定
- 「焙煎だより」の権利の確認が済んでいることを確かめ、店主が発注を確定した。
成果を渡す先
確定したデータと発注書は製造先へ渡します。制作の途中では、他のガイドへ素材や判断を依頼することがあります。依頼する時点と内容をそろえておくと、受け取った側が印刷の条件を推測で補わずに済みます。
| 渡す先 | 渡すもの | 渡す時点 |
|---|---|---|
| 製造先 | 確定データと発注書 | 工程05で発注を確定したとき |
| イラスト・画像素材 工程01 | 印刷の大きさ、紙の色、必要な形式。完成した素材を持ってこのガイドの工程03へ戻る | 印刷物に載せる挿絵が必要なとき |
| ブランド方針 工程04 | 校正の結果と、確認したときの明るさの条件 | 印刷で色が方針の範囲に収まらず、色の指定そのものを見直すとき |
| ネーミング・コピー 工程05 | 発注の予定日 | 印刷物に載せる名前の表記と確認状況を確かめるとき |
| キービジュアル・広告・SNS画像 工程01 | 確定したデザイン。色は画面用の指定で作り直す | 同じデザインを画面用の告知画像にも使うとき |
このガイドへ戻るとき
ブランド方針のガイドで色の指定が見直されたときは、工程03でデータを直し、工程04の校正からやり直します。名前の確認で表記が変わったときも同じです。製造後に追加で作る場合は、前回の確認の記録と校正を工程01の材料にします。