Design with AIAIと進める制作のリファレンス スキル

17 ・ 文書と発表

調査レポート

判断の前に、判断に必要な事実を集めて条件をそろえて比べ、結論と、その結論が成り立つ条件・根拠・未確認の点をまとめるガイドです。調べて何を決めるかを確かめるところから、結論の使い方を判断する人と決めてレポートにするまでを扱います。

決めること
調査の問い、比べる条件、結論が成り立つ範囲
主な成果
条件付きの結論、根拠と反例への対応、仮説と未確認の点を示した調査レポートと、元資料と確認日を残した調査メモ
前後のガイド
結論を使って案を選ぶときは企画・組織戦略・提案書、口頭で報告するときはスライド・発表原稿、読み物にするときは記事・長文のガイドへ進みます。

調査レポートの工程と判断

概要

調査レポートは、何かを決める前に、判断の根拠になる事実と、その事実が当てはまる範囲を示す成果物です。成果の中心は、結論、結論が成り立つ条件、根拠、まだ確かめていない点の4つです。どの案を選ぶかは、レポートを受け取った人が決めます。

AIは、使える環境があれば、資料の検索、記述の抜き出し、元資料との照合と参照箇所の記録、比較表の作成、反例の候補探しを担えます。公開情報を検索できるか、組織内の資料やデータを読めるかは、使う道具の接続と権限で決まります。人は、AIの照合と参照の記録をもとに、判断を左右する根拠、未確認の点、重要な条件を元資料で確かめます。要約の過程で日付や条件が抜けたり、元の資料にない内容が示されたりすることがあるためです。

調査メモと提出するレポートは分けて扱います。調査メモには、元資料、確認日、事実、解釈、反例、未確認の点をすべて残します。レポートには、判断する人が読む順に結論と条件を書きます。出典を載せるかどうかは、依頼された形式に合わせます。

向いている場面

  • 機能、方針、取引先などを決める前に、判断の根拠となる事実をそろえたいとき
  • 組織内の記録と公開情報など、性質の違う資料を同じ条件で比べたいとき
  • 「ほかでもやっている」のような伝聞を、確かめた事実と条件に置き換えたいとき

このガイドで扱わないこと

  • どの案を選ぶかの判断と提案。企画・組織戦略・提案書のガイドで扱います。
  • 画面の流れを描くための利用場面の調査。UXフローのガイドの工程01で扱います。
  • 調査の結果を読み物として伝えること。記事・長文のガイドで扱います。

隣接するガイドとの違い

ガイド決めること主な成果開く段階
15 スライド・発表原稿聴衆に話す順序と、画面に出す情報と口頭で補う情報の分担スライドと発表原稿話す場と持ち時間が決まっているとき
16 記事・長文本人の考えと経験を伝える構成と言葉本人が自分の考えとして出せる本文読み物として公開や共有をするとき
17 調査レポート判断に必要な事実、比べる条件、結論が成り立つ条件根拠と反例を含む調査レポート判断の前に事実をそろえるとき。発表、記事、提案の根拠を用意するときも開く
18 企画・組織戦略・提案書進める案、試す範囲、評価方法決定者が判断できる提案書決定を求めるとき。発表の場で提案する場合は、スライド・発表原稿のガイドも参照する

全体の流れと分担

工程は01から05へ進みます。工程01で人が依頼者と調べる目的を決め、工程05で結論の使い方を判断する人と決めます。互いに依存しないテーマや情報源は、工程03で別の担当や別に作業するAIに分けて、並行して集められます。工程05で根拠が足りないと判断されたら、工程02へ戻って調べ方を見直します。

調査レポートの工程と人の判断の位置 調べる目的、調べ方、資料を集める、比較と反例、結論と条件の順に進む。調べる目的と結論と条件で人が決める。資料を集める工程では、テーマや情報源ごとに分担して並行して集める。結論の段階で根拠が足りなければ調べ方へ戻る。結論は次のガイドへ渡す。 根拠が足りない 目的を決める 使い方を決める 01調べる目的 02調べ方 03資料を集める 04比較と反例 05結論と条件 分担して集めるテーマ・情報源ごと 次のガイド結論を渡す
塗りつぶした札は人が判断する位置です。破線の枠は、並行して資料を集める担当と、結論を渡す次のガイドを表します。上の線は、根拠が足りないときに調べ方へ戻る経路です。

工程ごとの分担

塗りつぶした印が判断、輪郭だけの印が作業です。
担い手01目的02調べ方03資料04比較と反例05結論とレポート
人判断:依頼者と調べる目的を決める判断:範囲、終える条件、担当を決める判断:判断を左右する根拠を元資料で確かめる判断:比較に使う資料と反例の扱いを決める判断:結論の使い方を決める判断:提出してよいかを決める
AI依頼から問いと前提を整理する情報源と比較の観点を提案する集めて元資料と照合し、参照を記録する(テーマごとに並行できる)比較表を作り、反例の候補を挙げる結論の文案と構成案を作る
データ担当なし集計の方法と条件を示す集計し、条件と一緒に渡す条件を分けた追加の集計をするなし
判断する人結果を使う判断を示すなしなしなし判断:結論の使い方を一緒に決める

迷ったときの参照先

手元の状況に近いものから、該当する節を開いてください。

015工程のうち1

調べて何を決めるか確認する

調査の結果で、誰が、何を、いつまでに決めるのかを確かめ、調査の問いを一文にします。

分担
  • AI依頼の内容から、決めたいこと、調査の問い、前提を分けて整理する
  • 人判断:依頼者と確かめて、調べる目的と、結果を使う判断を決める
材料
依頼の内容、判断する人と時期、既に分かっていること
成果
調査の問い、結果を使う判断、判断する人と時期、前提の一覧

考え方

決めたいことが曖昧なまま調査を始めると、関係しそうな資料を集め続けることになり、どこで終えればよいかが決まりません。最初に、この調査の結果で誰が何を決めるかを確かめます。決めたいことが分かれば、どの資料が必要か、どこまで調べれば十分かを判断できます。

調査の問いは、答えの形が分かる文にします。「オフライン視聴について調べる」では、何が分かれば終わりなのかが分かりません。「来期の開発対象に入れるかを判断するため、受講者の利用場面に需要があるかと、提供に必要な条件を調べる」のように、判断と問いを結びつけます。依頼者が決めたいことを言葉にしていない場合は、AIが判断の候補を挙げ、人が依頼者に選んでもらいます。

調査だけでは決まらない判断もあります。たとえば、事業としてどの取り組みを優先するかは、調べた事実に加えて、判断する人の方針で決まります。その場合は、調査で答えられる部分を問いにし、残りは判断する人が決める事項として分けて書きます。

推奨と理由

  1. 結果を使う判断を依頼者と確かめてから調べ始める

    理由判断が分からないまま集めた資料は、比較の条件がそろわず、後の工程で使えない部分が増えます。

  2. 既に分かっていることと前提を書き出す

    理由既存の資料で答えが出ている部分を調べ直さずに済みます。前提が誤っていた場合に、結論のどこが変わるかも追えます。

  3. 問いは一つにし、関連する問いは別に記録する

    理由複数の問いを同時に扱うと、資料ごとにどの問いの根拠かが分かれ、結論の条件を書き分けにくくなります。

判断の材料と進める条件

判断する人
調査を担う人が、依頼者と確かめて決める
判断の材料
  • 依頼の内容
  • 結果を使う判断、判断する人、判断の時期
  • 既に分かっていることと前提
進める条件
  • 調査の問いが一文で書け、答えの形(はい・いいえ、条件付きの答え、比較の結果など)が分かる
  • 依頼者が、その問いの答えで判断できると確認している
満たさない場合
依頼者が判断を言葉にできない場合は、判断の候補を示して選んでもらい、選ばれてから工程02へ進みます。

次へ進む目安

  • 調査の問いが一文で書け、答えの形が分かる
  • 結果を使う判断と、判断する人、判断の時期が書かれている
  • 調査で答える部分と、判断する人が決める部分が分かれている

具体例

オフライン視聴を加えるかの調査

説明のための架空の例です。オンライン講座を運営する事業者が、受講者向けのアプリに、講座の動画を端末に保存し、通信のない場所でも見られる機能(オフライン視聴)を加えるかを判断するために調査します。以降の工程でも同じ例を使います。

依頼
「オフライン視聴について、ほかのサービスの状況も含めて調べてほしい」という依頼を受けた。
AIの整理
決めたいことは、来期の開発対象に入れるか。判断するのは、開発計画を決める月次の企画会議。調査で答えられるのは、受講者に需要がある場面と、提供に必要な条件。事業として優先するかは、企画会議が決める事項。
調査の問い
受講者の利用場面にオフライン視聴の需要はあるか。あるなら、どの条件で提供できるか。(人が依頼者と確認)
前提
講座の動画の一部は、社外の講師が権利を持つ。提供の条件を調べるときに関わる。

025工程のうち2

調べ方を決める

問いに答えるために、どの情報源を、どの観点で、どこまで調べるかを決め、担当を割り当てます。

分担
  • AI問いから、情報源の候補、比較の観点、必要な情報の新しさを提案する
  • データ担当利用データの集計や聞き取りが必要な場合に、扱える方法と条件を示す
  • 人判断:調べる範囲、終える条件、担当を決める
材料
工程01の調査の問い、使える情報源と利用条件
成果
調査計画(情報源、比較の観点、情報の新しさ、範囲、終える条件と件数の目安、担当)

考え方

調査計画では、問いの各部分に情報源を割り当てます。公開資料、組織内のデータ、利用者への聞き取りでは、分かることも、手に入れるまでの手間も違います。組織内のデータや記録を使う場合は、閲覧の権限と、その目的で使ってよいかを先に確かめます。

比較の観点と、情報の新しさの基準もこの段階で決めます。観点が後から変わると、集めた資料を読み直すことになります。必要な新しさは、判断の時点で決まります。サービスの提供条件のように変わりやすい情報は、以前に確かめた値をそのまま現在の値として扱わず、判断の時点に近い日に元の情報で確かめ直し、確認日を残します。

終える条件は、判断を左右する根拠、条件、反例を確かめられたかで決めます。資料の件数は、集める量の目安として書きます。たとえば「提供条件の違いが分かり、提供をやめた事例を少なくとも一つ調べ、自社の記録で需要の手がかりを確かめたら比較に進む。同種のサービスは5件程度を目安にする」のように書きます。目安の件数に届いても反例を調べていなければ、結論の範囲を書けません。終える条件がないと、資料を集める工程が判断の時期を過ぎても続きます。

推奨と理由

  1. AIが検索や組織内資料の閲覧をできるかを先に確かめ、できない部分の担当を決める

    理由検索や閲覧ができるかは、使う道具の接続と権限で決まります。使えない情報源を計画に入れたままにすると、集める工程で止まります。

  2. 利用データの集計や聞き取りは、扱える担当を決めてから計画に入れる

    理由個人に関わるデータや聞き取りには、扱いの取り決めや同意が必要な場合があり、手順を知る担当が関わる必要があります。

  3. 終える条件は、判断を左右する根拠・条件・反例がそろったかで書き、件数は目安にする

    理由件数だけで終えると、反例や条件を調べないまま比較に進むことがあります。期限だけで終えると、どの根拠が足りないまま終えたのかが分からなくなります。

次へ進む目安

  • 問いの各部分に、対応する情報源が割り当てられている
  • 比較の観点と、情報の新しさの基準(判断の時点で確かめ直す情報を含む)が書かれている
  • 権限や同意が必要な情報源に、担当と確認方法が決まっている
  • 終える条件と、件数の目安が書かれている

具体例

オフライン視聴を加えるかの調査

情報源
自社アプリの視聴記録、受講者からの問い合わせ記録、同種の学習サービスが公開している提供条件、通信環境に関する公開資料。
比較の観点
保存できる期間、保存できる講座の範囲、端末の容量への配慮、権利者との取り決めの有無(公開情報で分かる範囲)。
新しさの基準
同種サービスの提供条件は、企画会議の前の週に、各サービスの提供条件のページで確かめ直し、確認日を残す。以前の調査で見た値は、そのまま使わない。
担当
公開情報の検索と元資料との照合はAI(検索と元資料の閲覧ができる環境で行う)。視聴記録の集計は、閲覧の権限を持つデータ担当。問い合わせ記録は、人が対象期間を指定して読む。
終える条件
提供条件の違いが分かり、提供をやめた事例を少なくとも一つ調べ、自社の記録で需要の手がかりを確かめたら比較へ進む。同種サービスは5件程度を目安にする。

035工程のうち3

資料を集める

計画に沿って資料を集め、元資料、確認日、事実と解釈を分けて調査メモに残します。数値は、記録から得た値と、そこからの推定を分けて記録します。

分担
  • AI検索や閲覧ができる範囲で資料を集め、元資料を開いて記述・日付・条件を照らした結果と、参照した箇所を記録する。互いに依存しないテーマや情報源は、別の担当や別に作業するAIに分けて並行して集められる
  • データ担当データを集計し、集計の条件と一緒に渡す
  • 人判断:判断を左右する根拠、未確認の点、重要な条件を元資料で確かめ、根拠に使うかを決める
材料
工程02の調査計画
成果
調査メモ(元資料と参照箇所、確認日、事実、観測値と推定、解釈、未確認の点)

考え方

集める段階では、資料ごとに、何が書かれているか(事実)と、そこから何が言えそうか(解釈)を分けて記録します。数値では、記録から直接得た値(観測値)と、その値から推し量ったこと(推定)も分けます。一つの要約にこれらが混ざると、比較の段階で、確かめた事実と推測を区別できなくなります。

AIが元資料を開ける環境があれば、記述と元資料の照合、日付と条件の確認、参照した箇所の記録をAIが行えます。人はその記録をもとに、判断を左右する根拠、未確認の点、数値の単位や対象期間などの重要な条件を、元資料で確かめます。AIが元資料を開けない環境では、照合は人が行います。どちらの場合も、元資料にたどり着けない情報は根拠に使わず、未確認の点に移します。

組織内のデータの集計結果は、集計の条件と一緒に受け取ります。対象期間、対象者の範囲、除外した記録などが分からないと、ほかの情報と比べるときに条件をそろえられません。記録されていないこと(たとえば再生した場所)を集計から言う場合は推定として扱い、推定の方法を残します。

推奨と理由

  1. 資料ごとに確認日と、元資料の参照箇所を残す

    理由提供条件などは変わることがあり、いつの時点の情報かが分からないと、結論の条件を書けません。参照箇所が分かれば、人が確かめる箇所を選んで開けます。

  2. 要約を作る前に、問いに関わる記述を抜き出す

    理由抜き出した記述は元資料と照らしやすく、要約で条件が落ちることを防げます。

  3. 観測値と推定を、同じ文に書かない

    理由推定が観測値と同じ書き方で残ると、比較や結論の段階で、確かめていない推測が事実として扱われます。

  4. 計画にない有望な資料は、問いとの関係を書いて別に置く

    理由その場で範囲を広げると、終える条件が意味を失います。必要なら計画を変えてから扱います。

次へ進む目安

  • 調査メモの各項目に、元資料と参照箇所、確認日、事実と解釈の区別がある
  • 数値の記録で観測値と推定が分かれ、推定には方法が書かれている
  • 判断を左右する根拠と重要な条件を、人が元資料で確かめている
  • 終える条件を満たしたか、満たせない理由が記録されている

具体例

オフライン視聴を加えるかの調査

調査メモの一件
同種サービスA。事実:有料会員は講座を30日間、端末に保存できる(提供条件のページ、確認日と参照箇所を記録)。解釈:期間を区切ることで権利者と合意している可能性がある(未確認)。
データ担当の集計
観測値:直近半年の再生のうち、通信が途切れて止まった再生の割合。記録に再生した場所はないため、移動中の視聴かどうかは分からない。集計の条件(対象期間、対象の講座、除外した記録)も一緒に受け取った。
問い合わせ記録
人が直近半年の記録を読んだ。通信のない場所で見たい、動画を端末に保存したい、という趣旨の問い合わせが複数あり(件数を記録)、多くは内容の更新が少ない資格対策の講座の受講者からだった。
照合の結果
AIの照合記録では、「サービスEの保存機能」は提供条件のページに見つからなかった。人も元のページで確かめて未確認の点に移し、比較には使わないことにした。条件を確かめられたのが目安の5件に対して4件だったため、代わりにサービスFの現在の提供条件を確かめて加え、比較の対象をA・C・D・F・Gの5件にした。

045工程のうち4

比較して反例も調べる

条件をそろえて資料を比べ、結論の候補に合わない事例も調べて、結論が成り立つ範囲を確かめます。

分担
  • AI比較表を作り、条件の違いと、結論の候補に合わない事例の候補を挙げる。判断の目的と問いを渡されていれば、候補ごとに結論への影響も評価する
  • データ担当必要に応じて、条件を分けた追加の集計をする
  • 人判断:比較に使う資料と、反例が結論の範囲をどう変えるかを判断する
材料
工程03の調査メモ
成果
比較表、反例とその扱い、結論の候補と条件、仮説として分けた点

考え方

比べる前に、資料の条件をそろえます。時点、対象者、地域、指標の定義が違う資料を同じ表に並べると、差が条件の違いから生じたのか、調べたい対象の違いから生じたのかを区別できません。条件をそろえられない資料は、表に入れず注記として扱います。記録から推し量った推定は、推定の方法と不確かさ(どの程度ずれうるか)を添えれば比較に使えます。その場合も、表の上で推定と分かるように示し、事実と同じ扱いにしません。

反例は、結論の候補に合わない事例です。「需要がある」という候補に対して、機能を提供したのちに取りやめた事例があれば、取りやめた理由を調べます。反例を調べると、結論が当てはまらない条件が分かり、結論の範囲を書けるようになります。

原因と結果の関係や、利用の見込みを書く場合は、その根拠を確かめます。二つの事柄が同時に起きていても、一方が他方の原因だとは限りません。同じように、困っている記録があることは、機能を用意すればどれだけ使われるかの根拠にはなりません。根拠がなく、推定の方法も示せない部分は仮説として残し、結論と分けて次の工程へ渡します。

調査メモから結論までの経路 調査メモの事実と観測値は比較に入り、比較の結果が結論と条件になる。推定は方法と不確かさを添えて比較に入り、結論でも推定と明記する。反例も比較に入り、結論が成り立つ範囲を決める。確かめていない仮説は比較を通らず、未確認の点として結論と分けて渡す。 調査メモ 比べる まとめる 事実 観測値 推定 仮説 比較 反例 範囲を決める 結論と条件推定は推定と明記 方法と幅を添える 未確認の点・仮説結論と分けて渡す
実線の枠の事実と観測値は、そのまま比較に入ります。破線の枠の推定は、推定の方法と不確かさを添えて比較に入り(破線の矢印)、結論でも推定と明記します。薄い破線の枠の仮説は、確かめていないため比較を通らず、未確認の点として結論と分けて渡します。反例は比較に入り、結論が成り立つ範囲を決めます。

推奨と理由

  1. 比較表の各列に、時点と条件を書く

    理由読み手が値を条件と一緒に読めるようになり、条件の違う値どうしの比較を防げます。

  2. 反例の候補探しと影響の評価はAIに任せ、採るかどうかは人が確かめて決める

    理由判断の目的と問いを渡せば、候補ごとに結論への影響をAIに評価させることもできます。どの反例を採り、結論の範囲をどう変えるかは結論の使い方に関わるため、人がAIの評価と元資料を確かめて決めます。

  3. 条件によって答えが変わる場合は、結論の候補を条件ごとに分けたまま次へ渡す

    理由一つにまとめると、どの条件で成り立つ結論なのかが失われます。

次へ進む目安

  • 比較表の値が、時点・対象・定義のそろったものだけで構成され、推定の値には方法と不確かさが添えられている
  • 結論の候補ごとに、反例を調べた結果が記録されている
  • 原因と結果の関係や利用の見込みを書いた箇所に根拠があり、根拠のない部分は仮説として分けられている

具体例

オフライン視聴を加えるかの調査

比較
提供条件を確かめた5件(A・C・D・F・G)のうち4件は、保存できる期間を区切っていた。1件は期間を区切らず、保存の対象を自社で制作した講座に限っていた。
反例
以前オフライン視聴を提供し、のちに取りやめたサービスBを調べた。公開された告知では、講座の内容を頻繁に更新するため、保存された古い版が問い合わせの原因になったと説明していた。
人の判断
講座の更新の頻度が、結論の条件になると判断した。データ担当に、通信が途切れて止まった再生の割合を、講座の更新の頻度別に集計してもらった。止まった再生の記録と問い合わせは、困っている受講者がいることの根拠になるが、機能を用意すればどれだけ使われるかの根拠にはならないため、利用の見込みは仮説として分けた。
結論の候補
更新の少ない講座では、通信のない場所で見たいという需要がある(問い合わせで確認)。どれだけ使われるかは仮説。更新の多い講座では、古い版の保存が問題になるおそれがある。

055工程のうち5

結論と条件をまとめ、レポートにする

結論、条件、根拠、仮説、未確認の点をまとめ、結論の使い方を判断する人と決めて、レポートの形に整えます。

分担
  • AI結論と条件の文案、レポートの構成案を作る
  • 人判断:判断する人と、結論の使い方を決める
  • 判断する人判断:結論の範囲と未確認の点を読み、使い方を一緒に決める
  • 人判断:レポートの記述と数値を調査メモと照らし、提出してよいかを決める
材料
工程04の比較表、反例とその扱い、結論の候補と条件、仮説として分けた点、調査メモ
成果
調査レポート、結論の使い方、調査メモ(提出後も保管)

考え方

結論は、条件と一緒に書きます。「需要がある」とだけ書くと、読み手は条件を問わずに当てはめます。「更新が年1回以下の講座では、通信のない場所で見たいという問い合わせがあり、需要がある」のように、どの範囲で、何を根拠に言えるかを結論の文に含めます。確かめていない見込みは結論の文に入れず、仮説として分けて書きます。

結論をどう使うかは、判断する人と確かめて決めます。判断の根拠としてそのまま使うのか、追加の検証を条件に使うのか、判断を見送る材料にするのかによって、レポートで先に示す内容が変わります。判断する人が根拠を足りないと判断した場合は、工程02「調べ方を決める」へ戻り、問いと終える条件を見直します。

レポートには、結論、条件、根拠、反例への対応、仮説、未確認の点を、判断する人が読む順に並べます。出典を載せるかどうかは依頼された形式に合わせます。載せない場合も調査メモには元資料と確認日を残し、根拠を尋ねられたときにたどれるようにします。

推奨と理由

  1. 結論の文に条件を含める

    理由条件を別の節に分けると、結論だけが引用されて条件が失われることがあります。

  2. 仮説と未確認の点は、結論への影響と一緒に書く

    理由影響が分かると、判断する人が、追加の調査や試験を求めるか、未確認のまま判断するかを選べます。

  3. 提出前に、レポートの数値と記述を調査メモと照らす

    理由文章を整える段階で表現を変えると、元の条件が抜けたり、推定が事実の書き方に変わったりすることがあります。

判断の材料と進める条件

判断する人
調査を担う人と、結果を使って判断する人
判断の材料
  • 条件付きの結論の文案
  • 反例への対応
  • 仮説と未確認の点、それぞれの結論への影響
進める条件
  • 判断する人が、結論の範囲と、仮説・未確認の点を理解したうえで、使い方を決めている
  • レポートの数値と条件が、調査メモと一致している
満たさない場合
根拠が足りないと判断された場合は、工程02へ戻ります。結論の文が条件を欠いている場合は、工程04の比較に戻って条件を確かめます。

次へ進む目安

  • 結論が条件付きの文で書かれ、根拠と反例への対応が示されている
  • 仮説が、結論の文と分けて書かれている
  • 結論の使い方が、判断する人と決まっている
  • 仮説と未確認の点に、結論への影響が書かれている
  • レポートと調査メモの数値・条件が一致している

具体例

オフライン視聴を加えるかの調査

結論
更新が年1回以下の講座では、通信が途切れて止まる再生の割合がほかの講座より高く(観測値)、通信のない場所で見たいという問い合わせもあった(事実)。この範囲では、オフライン視聴の需要があると判断できる。更新の多い講座では、古い版の保存が問い合わせの原因になるおそれがある(提供をやめた他社の事例)。
仮説として分けたこと
機能を用意した場合に、受講者がどれだけ使うか。止まった再生の記録と問い合わせだけでは分からないため、試験などで確かめる対象として渡す。
未確認の点
社外講師の講座を、端末に保存できる形で提供してよいか。講師との取り決めを確かめるまで、対象にできる講座の数が決まらない。
結論の使い方
来期の開発対象に入れるかを決める材料にする。対象の講座を限った試験提供の案を作る場合に、この結論と条件を使い、利用の見込みは試験で確かめる仮説として扱う。(人が企画会議の担当者と確認)
次
結論、条件、仮説、未確認の点を持って、企画・組織戦略・提案書のガイドの工程03「選択肢を比べ、推奨する案を選ぶ」へ進む。

成果を渡す先

調査レポートは、案を選ぶ、発表する、読み物にするなど、ほかのガイドの材料になります。渡すときは、結論だけでなく条件と仮説も一緒に渡し、受け取った側が条件を外して使わないようにします。

渡す先渡すもの渡す時点
18 企画・組織戦略・提案書条件付きの結論、根拠、仮説、未確認の点結論の使い方が決まり、案を比べる段階になったとき。受け取った側は工程03で選択肢を比べる
15 スライド・発表原稿結論、条件、比較表調査の結果を口頭で報告するとき。ページごとに伝えることを決める材料にする
16 記事・長文事実と解釈を分けた調査メモ調査の結果を読み物として公開するとき
13 図解・グラレコ比較表と、結論の条件比較の結果や条件の関係を図で示したいとき
01 UXフロー利用場面に関する結論と条件結論を画面の流れの設計に使うとき。工程01「利用場面を調べる」の材料にする

このガイドへ戻るとき

企画・組織戦略・提案書のガイドで根拠が足りないと分かったときや、会議で新しい問いが出たときは、このガイドの工程01から始めます。結論の条件だけを確かめ直す場合は、工程04から見直します。提供条件のように変わりやすい情報を使った結論を、時間がたってから使う場合は、判断の時点で工程03の確認をやり直します。